ニュースPickup 2024年11月16日を掲載しました。

2024年9月28日

シリーズ「給与計算のツボ」第9回 〜時間外手当の計算④〜

シリーズ「給与計算のツボ」は、スタートアップ経営者の方や、給与担当を始めたばかりの初心者向けに、給与計算にまつわるあれこれを、不定期にお伝えするものです。
給与計算のカラクリの基本的な仕組みを知っておくことで、従業員や社長からの質問に、自信を持って答えられるようになることを目指します。
リクエストがあればお問い合わせ(→こちら)にお書き下さい。

今回は時間外手当の計算の最終回として、月60時間を超える時間外労働についての割増賃金について考えて行きます。

月60時間を超える割増については、2010年に労働基準法の改正があり、大企業はその時から施行されていました。2023年4月より、このルールが中小企業にも適用されることになり、全ての事業主が月60時間を超える時間外労働に対して割増率50%以上の時間外手当を支払うこととなっています。

ポイントが2つあり、1つ目は、月60時間を超えた時間外労働のみが割増賃金率50%以上の対象となるという点です。
例えば月70時間の時間外労働の場合は、60時間分は通常の25%以上の割増、超えた10時間分についてのみ50%以上の割増率で時間外手当を支払うという事です。70時間分全てを50%以上の割増率で支払うということではありません。
実際の計算では、上の例の場合、70時間分の通常の時間外手当(125%)+60時間超10時間分の割増差額(25%)を支払う運用の方が個人的にはしっくり来るのではと感じています。

2つ目のポイントは、このルールは法定休日労働には適用されないということです。逆に言えば所定休日の労働時間は60時間に含める必要があるということです。従って所定休日の割増賃金率を35%にしていても、その部分含めて割増率50%以上にする必要があります。そうなると厄介なのは、60時間を超えた時間は通常の時間外と所定休日の合計であるため、これらを区別することができないという点ですね。仮に時間外労働が50時間、所定休日労働が20時間あったとしましょう。合計で70時間、10時間分の割増は50%で良いとして、60時間分の割増に所定休日労働を何時間分含めるのか、、、。
実務的にはこの場合も上記のやり方、50時間分の通常の時間外手当(125%)+20時間分の所定休日手当(135%)+60時間超10時間分の割増差額(25%)がわかりやすと思います(実際には60時間超の部分で法を上回っていますが)。
いずれにしても法定休日出勤と所定休日出勤は時間管理を分けて計算する必要があります。

また、割増賃金率の引上げをする代わりに、代替休暇を付与する方法もあります。これは労使協定を結んだ上で、月60時間を超える時間外労働で引き上げとなる割増賃金分に対して休暇を1日または半日単位で付与するというものです。したがって、通常の時間外労働に対して支払われる割増賃金は支払う必要があるため、間違えないようにしましょう。
代替休暇については下記の資料に詳しく記載されていますので、合わせてチェックしてみて下さい。

月60時間を超える法定時間外労働に対して:https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/091214-1_03.pdf

今週の振り返り
  • 月60時間を超える時間外労働は50%以上の割増が必要
  • 50%以上の割増が必要なのは60時間を超えた部分にのみ、全体ではない
  • 法定休日労働時間はカウントしない、所定労働時間はカウントに入れる
  • 代替休暇制度という選択肢もある

それでは今週のニュースPickupをどうぞ!

厚生労働省
厚生労働省関係の主な制度変更(令和6年10月)について(9/26)

令和6年10月に実施される厚生労働省関係の主な制度変更のうち、特に国民生活に影響を与える事項についてお知らせ致します。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_43327.html

労働経済動向調査(令和6年8月)の概況(9/24)
  • 正社員等、パートタイム労働者ともに、「不足」とする事業所割合が引き続き多い
  • 正社員等労働者数が「増加」とする事業所割合が多い
  • 労働者不足の対処方法
    正社員等採用・正社員以外から正社員への登用の増加
    在職者の労働条件の改善(賃金)

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/keizai/2408/

毎月勤労統計調査 令和6年7月分結果確報(9/26)
  • 現金給与総額は403,090円(3.4%増)となった。うち一般労働者が530,596円(3.9%増)、パートタイム労働者が115,141円(4.2%増)となり、パートタイム労働者比率が30.77%(0.45ポイント上昇)となった。なお、一般労働者の所定内給与は334,353円(2.6%増)、パートタイム労働者の時間当たり給与は1,339円(3.7%増)となった。
  • 共通事業所による現金給与総額は4.7%増となった。うち一般労働者が5.0%増、パートタイム労働者が3.5%増となった。
  • 就業形態計の所定外労働時間は10.1時間(2.0%減)となった。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r06/2407r/2407r.html

国税庁
年末調整がよくわかるページ(令和6年分)(9/24)

https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/index.htm

名古屋市
男性育休取得促進セミナー(9/25)

育児休業取得経験のある現役世代の男性をパネリストに迎え、育休取得にあたっての職場や家庭での経験談についてお話いただきます。また、後半ではパネリストとの交流会を開催します。
育児休業を取得予定、取得中、取得経験のある男性の方や、男性の育休取得に興味がある企業の人事担当の方、また、仕事と家事や育児を両立したい方など、是非ご参加ください。
https://www.city.nagoya.jp/sportsshimin/page/0000177266.html

ITmedia ビジネスオンライン
育休社員の「同僚に一時金」で、どんな効果が? 三井住友海上・大和リースの事例(9/27)

同僚が育児休暇を取得するとき、サポートに対し、適切な評価や報酬がないことを不満に思う──そうした社員への対応として、同僚に対し一時金を支給する企業が現れている。どのような狙いで、いくらを支給し、実際にどのような効果があったのか。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2409/26/news077.html