ニュースPickup 2025年6月28日を掲載しました。

2025年6月28日

企業による奨学金返還支援 ~直接JASSOに送金する「代理返還」制度とは~

皆さんは、企業による奨学金返還支援制度をご存じでしょうか。
以前は、企業が従業員に「奨学金返済手当」などの名目で金銭を支給し、従業員本人がそれを用いて日本学生支援機構に返還する形が一般的でした。

しかし、2021年4月からは、企業が本人に代わって直接機構に返還金を納付できる「代理返還制度」が利用できるようになりました。

代理返還制度の仕組み
  • 企業等が「独立行政法人日本学生支援機構(以下JASSO)」と代理返還契約を結び、従業員(返還義務者)の同意を得たうえで、
  • 毎月または一定期間ごとに、奨学金返還金を本人に代わってJASSOへ直接送金するものです。

本人が返済を行うのではなく、企業が返済金をJASSOに直接納付するため、
返還義務者の支払負担軽減につながります。

企業による返還支援のメリット
  • 若手採用のアピールポイントに
    奨学金の返済は若年層の経済的負担の大きな要因のひとつ。返還支援制度の導入は、応募者への安心感提供に有効です。
  • 人材の定着促進
    「一定期間の在籍」を条件に支援を続けることで、早期離職抑止につながります。
  • 税・社会保険面での優遇措置
    2021年の税制改正により、代理返還にかかる支援金は一定要件を満たせば、
     - 従業員の給与所得とみなされず非課税
     - 社会保険の標準報酬月額にも含まれず保険料負担増を防止
     - 法人税上は損金(経費)として算入可能
     - 賃上げ促進税制の対象となる可能性もある
    というメリットがあります。

従業員のメリット
  • 返済の負担軽減と手続きの簡略化
     企業が直接JASSOに返済を行うため、本人の返済手続きの手間が減り、家計負担が軽減されます。
  • 非課税・社会保険料負担増なし
     支援金が非課税かつ社会保険料の対象外となるため、実質的な手取り減がありません。

導入時の注意点
  • 代理返還契約の締結
    企業等はJASSOと所定の契約書類を取り交わし、手続きを進めます。
  • 対象者や支援内容の明確化
    対象者の範囲(新卒者限定や中途も含むなど)、支援額や条件、退職時の扱いなどを社内規程等で明確に定めることが大切です。
  • 非課税・社会保険料非対象の要件遵守
    直接JASSOに支払うこと、契約や同意書の保存など形式的な要件を満たす必要があります。

まとめ

企業等が日本学生支援機構へ直接返還金を送金する「代理返還」は、
従業員の経済的負担を軽減しながら、企業にとっては採用・定着面でのメリットや税務・社会保険面の優遇を享受できる制度です。導入手続きもJASSOの支援体制が整っており、中小企業でも導入しやすくなっています。

若手人材の採用・定着施策として、一度この制度の研究をされてみてはいかがでしょうか?

【参考】独立行政法人日本学生支援機構:https://dairihenkan.jasso.go.jp/

それでは今週のニュースPickupをどうぞ!!


厚生労働省
令和6年労使コミュニケーション調査 結果の概況(6/24)

「事業所調査」

  1. 労使関係についての認識:労使関係が「安定的」(注1)と認識している事業所は 86.2%(前回令和元年調査 81.9%)
  2. 事業所が労使コミュニケーションを重視する内容(複数回答):「日常業務改善」76.1%(同 75.3%)が最も多く、次いで「作業環境改善」71.7%(同 72.9%)、「職場の人間関係」68.6%(同 69.5%)の順

「労働者調査」

  1. 労使関係についての認識:労使コミュニケーションが「良い」(注2)と認識している労働者は 55.8%(同 60.5%)
  2. 労働者が労使コミュニケーションを重視する内容(複数回答):「職場の人間関係」66.0%(同 66.2%)が最も多く、次いで「日常業務改善」59.0%(同 57.7%)、「作業環境改善」52.5%(同 52.0%)の順  他

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/18-r06gaiyou.html

令和6年度「過労死等の労災補償状況」を公表します(6/25)
  • 過労死等に関する請求件数 4,810件 (前年度比212件の増加)
  • 決定件数 4,312件(前年度比1,033件の増加)
  • 支給決定件数 1,304件 (前年度比196件の増加)、うち死亡・自殺(未遂を含む)件数 159件(前年度比 21件の増加)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59039.html

第383回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 資料(6/26)
  1. 「規制改革実施計画」について(報告)
  2. 労働者派遣事業の許可等について
  3. 有料職業紹介事業及び無料職業紹介事業の許可について

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58603.html

経団連
2025年春季労使交渉・中小企業業種別回答状況[了承・妥結含](加重平均)(6/20)

https://www.keidanren.or.jp/policy/2025/044.pdf

弁護士ドットコムニュース
「書面なしの発注は禁止」フリーランスが知っておきたい新法の基本 小学館などに初の違反勧告(6/26)

公正取引委員会によるフリーランス・事業者間取引適正化等法(以下、フリーランス法)違反での勧告が相次いでいる。6月17日には、小学館と光文社に対し、フリーランス・事業者間取引適正化等法(以下、フリーランス法)違反で勧告を出した。読売新聞などが報じた。2024年11月に施行された同法での勧告は初めて。
https://www.bengo4.com/c_5/n_19016/

総務省
テレワーク関係府省連絡会議(第16回)配布資料(6/24)

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/telework_renraku/02ryutsu06_04000254.html

労働力調査(基本集計)2025年(令和7年)5月分(6/27)
  1. 就業者数
    就業者数は6838万人。前年同月に比べ72万人の増加。34か月連続の増加
  2. 完全失業者数
    完全失業者数は183万人。前年同月に比べ10万人の減少。4か月連続の減少
  3. 完全失業率
    完全失業率(季節調整値)は2.5%。前月と同率

https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01toukei04_01000281.html

「雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績(令和6年度)」を公表しました(6/25)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58773.html

愛知県
刑務所出所者等の再出発を支援する雇用主の力!~「協力雇用主」の登録を考えてみませんか~協力雇用主登録拡大に向けたセミナーへの参加企業募集(6/20)

愛知県では、再犯防止の観点から、刑務所出所者等の安定した就労を目指し、事業主や人事担当者等を対象に「協力雇用主」への登録を呼びかけるセミナーを、今年度新たに、名古屋保護観察所・愛知労働局との共催により開催します。
https://www.pref.aichi.jp/press-release/kyoryoku.html