労働基準法改正に向けた議論が本格化 働き方と労働時間制度の今後を読み解く
厚生労働省の「労働政策審議会 労働条件分科会」では、来年の労働基準法改正を見据え、さまざまな労働問題について幅広い検討が進められています。フリーランスなどの労働者性の問題、勤務間インターバルや「つながらない権利」といった労働からの解放に関する課題、過半数代表の在り方を巡る労使コミュニケーション、さらには副業・兼業時の割増賃金の取り扱いなど、議論のテーマは多岐にわたっています。
こうした中、11月18日に開催された第205回労働条件分科会では、労働基準関係法制の見直しに関連して具体的な議論が進められました。
今回は、配布された資料の中から最近のテーマを取り上げ、労働基準法改正の今後の方向性を読み解いていきたいと思います。
まず、議論の論点として次の4点が示されています。
■テレワーク等の柔軟な働き方
- 現行のフレックスタイム制は、全ての労働日の始業・終業時刻を労働者本人の決定に委ねることが導入の要件となっている。フレックスタイム制により始業・終業時刻を労働者が決定する日と使用者が決定する日の混在について、どう考えるか。
- 始業・終業時刻を労働者が決定する日と使用者が決定する日の混在を認める場合、どの程度混在することを認めるべきか。また、それぞれの労働時間管理をどう考えるか。
■副業・兼業
- 労働者が副業・兼業を行う場合に、割増賃金の支払いに係る労働時間を通算することとされている。副業・兼業を行う労働者の割増賃金の支払に係る労働時間の通算の在り方について、どう考えるか。
- 副業・兼業を行う労働者の健康確保について、どう考えるか。
■管理監督者
- 本来は管理監督者等に当たらない労働者が管理監督者等と扱われている場合があることや、管理監督者等に特別な健康・福祉確保措置は設けられていないことを踏まえ、管理監督者等の要件や健康確保について、どう考えるか。
■労働時間の情報開示
- 労働時間の企業内部への情報開示は、企業内部における労使協定等の手続きにおいて重要である一方で、企業外部への情報開示について、⾧時間労働の是正の観点から、正確な情報が開示されていることが望ましいと考えられるが、事業場の実態は様々である中で、どう考えるか。
テレワークとフレックスタイム制は一見相性が良いように見えますが、週のうち一部のみ出勤する「部分的なテレワーク」は、現行制度では想定されていません。この点をどのように制度的に整理するのかが、今後の大きな論点となりそうです。
また、副業・兼業については、複数の企業で働く場合に法定労働時間を通算することが実務上困難であるとの指摘があり、その扱いをどうするのか、あわせて健康確保をどう図るのかが議論されています。
このほか、解雇と金銭救済制度についても、諸外国の制度を参考にしながら検討が進められていくようです。
今後の議論の行方に注目したいところです。
なお、次回の分科会は12月24日に開催予定とされています。
出典:厚生労働省|第205回労働政策審議会労働条件分科会(資料)(11/18)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65974.html
それでは今週のニュースPickupをどうぞ!!
厚生労働省|人事労務マガジン特集第240号(12/17)
人事労務マガジン特集第240号では、労働者協同組合(略称:ろうきょう)を通じた地域活性化をテーマとしたオンラインセミナーの案内や、不妊治療と仕事の両立支援を担当する方向けの研修会・個別相談会(オンデマンド)の実施内容が紹介されています。
🔎今週の視点
「労働者協同組合」は名前は耳にすることがあるのですが、なかなか実態の理解が進みません。こういったセミナーを通じて理解を深めるのも良いかもしれませんね。
出典:厚生労働省|人事労務マガジン特集第240号(12/17)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67047.html
厚生労働省|令和7年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します(12/19)
令和7年の高年齢者雇用状況等報告によると、65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施している企業は99.9%に達しました。一方、70歳までの就業確保措置を実施している企業は34.8%にとどまっています。
🔎今週の視点
65歳までの雇用確保がほぼ定着する中、今後は70歳までの就業機会をどう位置づけるかが、企業ごとの判断に委ねられている状況といえそうです。高齢者の就業に対する捉え方は人によって千差万別だと感じます。画一的に扱うのでなく高齢労働者が働きやすい制度・環境づくりを考えていければと思います。
出典:厚生労働省|令和7年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します(12/19)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66853.html
厚生労働省|令和7年就労条件総合調査 結果の概況(12/19)
就労条件総合調査によると、1企業平均の年間休日総数は112.4日となり、昭和60年以降で過去最多となりました。年次有給休暇の労働者1人平均取得日数も12.1日と、こちらも過去最高を更新しています。
🔎今週の視点
資料を細かくみていると興味深いことがいくつも見つかります。例えば勤務間インターバル制度は、「導入している」が 6.9%。まだまだだと思いますが、導入しない理由は、超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないため」が 57.3%と納得の数字だったりします。
自分の会社の状況と見比べながら資料を見ていくと、新しい発見があるかもしれませんね。
出典:厚生労働省|令和7年就労条件総合調査 結果の概況(12/19)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/25/index.html
中小企業庁|賃上げ支援キャラバンを実施します(12/15)
経済産業省は、中小企業・小規模事業者の賃上げを支援するため、全国で施策広報を目的としたキャラバンイベントを実施すると発表しました。賃上げ関連施策の紹介に加え、現地での個別相談会も予定されています。
🔎今週の視点
12月22日(月)にYouTubeにてキックオフ配信があるそうです。1月の地域ブロック開催に先立ち、どんな支援策があるのかを見るだけでも価値がありそうですね。
出典:中小企業庁|賃上げ支援キャラバンを実施します(12/15)
https://www.meti.go.jp/press/2025/12/20251215003/20251215003.html
ITmedia ビジネスオンライン|企業の半数以上「年賀状やめた」 コストや手間以外の理由も(12/19)
帝国データバンクの調査によると、年賀状じまいをすでに実施した企業は58.1%に達し、2026年1月分の年賀状を送付する企業は3割を下回る結果となりました。
🔎今週の視点
年賀状の廃止は、単なるコスト削減にとどまらず、業務効率化や企業間コミュニケーションの変化を反映した動きとも考えられます。業種によっても動向に大きな差があるのではないでしょうか?
出典:ITmedia ビジネスオンライン|企業の半数以上「年賀状やめた」 コストや手間以外の理由も(12/19)※この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2512/19/news025.html

