シリーズ「給与計算のツボ」第4回 〜フレックスタイム制〜
シリーズ「給与計算のツボ」は、スタートアップ経営者の方や、給与担当を始めたばかりの初心者向けに、給与計算にまつわるあれこれを、不定期にお伝えするものです。
給与計算のカラクリの基本的な仕組みを知っておくことで、従業員や社長からの質問に、自信を持って答えられるようになることを目指します。
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今回は、最近導入されている企業も増えてきているフレックスタイム制について解説しましょう。
フレックスタイム制は働き方改革の一環として、労働者が「個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で選択できるようにする」ことを目的とした労働時間制度の一つです。
これは、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が⽇々の始業・終業時刻、労働時間を⾃ら決めることのできる制度です。
フレックスタイム制を導入するためには、
1就業規則等に始業時刻・終業時刻を労働者の決定に委ねることを定める。
2労使協定を締結する。
の2点が必要です。
詳しくは「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き(厚生労働省)」をご覧頂くとして、ここではフレックスタイムを導入する上での注意点に触れておきましょう。
2019年の法改正で、清算期間の上限が従来の1ヶ月から3ヶ月まで延長されましたが、1ヶ月を超える清算期間を設定するのは結構注意が必要で、ここでは清算期間1ヶ月と仮定して話を進めます。
法定休日と所定休日で扱いが異なる
フレックスタイム制であっても、法定休日の労働は総労働時間に含めず、法定休日労働時間分は総労働時間と分けて割増賃金を支払う必要があります。一方所定休日の出勤は総労働時間に含めて計算するので、労使協定で定めた清算期間における総労働時間を越えなければ、割増賃金を支払う必要がありません。逆に言うと、所定休日の労働時間を総労働時間から除外することはできません。
法定休日と所定休日の扱いを同じにしている会社も多く見られますが、これまで所定休日にも休日出勤の割増賃金を支払ってきた場合には、上記のような考え方との整合をつけるために一工夫が必要で、少し悩ましいかも知れませんね。
余談になりますが、だとしたら所定休日労働は平日と同じなので、「所定休日に好きなように出社して仕事をしても良い。」と考える向きもありますが、フレックスタイム制はあくまで、「⽇々の始業・終業時刻、労働時間を⾃ら決めることのできる」制度であり、出勤日まで自由に決められる制度ではありませんので、そこは従業員の方々に理解を求める必要があります。
とはいえ、厚生労働省の資料にも、「コアタイムを設けずに、実質的に出勤日も労働者が自由に決められることとする場合」という記載もあり、会社としてのポリシーをはっきりしておくことが求められます。
有給休暇の取り扱い
年次有給休暇を取得した場合、フレックスタイム制では1日分働いたとみなして、総労働時間に追加するやり方で精算します。ただ、フレックスタイム制ではそもそも1日の所定労働時間がありません。
そのため、あらかじめ労使協定で1日の所定労働時間に相当する、標準となる1日の労働時間を定めておきます。これは清算期間における総労働時間を、期間中の所定労働日数で割った時間を基準として定めます。
完全週休二日制の場合の特例
フレックスタイム制を採用していても、精算期間全体で週平均40時間を超える労働はできません。ただ、これだと週40時間の枠内であってもカレンダーの巡りによって、清算期間における総労働時間が、法定労働時間の総枠を超えてしまう場合があります。
例:月所定労働日数が23日になる場合、1日8時間労働だと8時間×23日=184時間、法定労働時間の総枠=40時間÷7×31日=177.1時間(2024年7月など)
これに対して法改正があり、労使協定により「清算期間内の所定労働日数×8時間」を労働時間の限度とすることが可能となりました。週休2日制の会社では労使協定で忘れないように上記の記載をしましょう。そうでない場合、1日8時間を所定労働日ひと月働いただけで、36協定の締結や割増賃金の支払いが必要になってしまうことになります。
フレックスタイム制は業種によっては、労使双方のメリットの大きい制度だと思います。
上記ポイントに注意して導入の検討をされるのも一考だと思います。
それでは今週のニュースPickupをどうぞ!!
■厚生労働省
令和6年 民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況を公表します
~ 賃上げ額(17,415 円)、賃上げ率(5.33%)はいずれも昨年を大きく上回った~(8/2)
平均妥結額は17,415円で、前年(11,245円)に比べ6,170円の増。
また、現行ベース(交渉前の平均賃金)に対する賃上げ率は5.33%で、前年(3.60%)に比べ1.73ポイントの増。
賃上げ額、賃上げ率はともに昨年を大きく上回った。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41871.html
「令和5年度雇用均等基本調査」結果を公表します~女性の管理職割合や育児休業取得率などに関する状況の公表~ (7/31)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/71-r05.html
令和6年8月1日からの基本手当日額等の適用について(7/30)
- 賃金日額・基本手当日額上限の変更
- 高年齢雇用継続給付の支給限度額の変更 他
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000160564_00041.html
愛知県
「高年齢者合同企業説明会」の参加企業を募集します!(8/2)
愛知県では、長年培った経験や能力を生かすことを望む高年齢者と、高年齢者の就業機会の選択肢を整える企業とのマッチングの機会を提供するため、高年齢者を対象とした合同企業説明会を開催します。
この度、名古屋市及び豊田市内で開催する合同企業説明会の参加企業を募集します。
https://www.pref.aichi.jp/press-release/kourei-2024-kigyobosyu.html
精神障害者雇用のための支援つき面接会の参加企業及び参加求職者を募集します(8/1)
愛知県では、精神障害のある方々の就職活動支援として、企業と求職者のマッチングの機会を促進するため、障害者を継続してサポートしている支援者が同席できる「精神障害者雇用のための支援つき面接会」を開催します。
https://www.pref.aichi.jp/press-release/seishin-mensetsu2024.html
公益財団法人あいち産業振興機構
経営革新セミナー(5)デジタル人材育成の進め方 入門セミナー(8/2)
「自社のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進したいが、どのような人材が必要か分からない」「デジタル人材の育成方法や教育プログラムについて知りたい」そんな悩みをお持ちのリーダーや人事担当者の皆さまに向けて、具体的な進め方を解説します。
なお、セミナー終了後に個別相談会(事前予約制、先着順)も行います。
https://event.aibsc.jp/seminars/view/965
ITmedia ビジネスオンライン
「休暇がキャリアを阻害する」は真実か? 逆の効果をもたらす、重要な「休む力」
十人十色な「キャリア安全性」(8/1)
「休暇がキャリアを阻害する」という考えを持っているビジネスパーソンも少なくないかもしれない。しかし、今あえて「休みを取る」という動きが広がってきているように思う。なぜかというと……。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2408/01/news068.html
日本商工会議所
業況DIは、消費低迷の中、コスト増継続で横ばい。先行きは、消費拡大の見通し立たず、慎重な見方(LOBO調査2024年7月結果)(7/31)
日本商工会議所が31日に発表した7月の商工会議所LOBO(早期景気観測)調査結果によると、全産業合計の業況DIは、▲16.3(前月比▲0.1ポイント)。製造業は、物価高により企業の設備投資意欲に弱さが見え、機械器具関係を中心に悪化した。小売業・サービス業は、堅調なインバウンド需要が下支えするものの、長引く物価高による消費者の購買意欲の低下で力強さを欠いている。また、卸売業でも日用品や飲食品関係の需要減で弱含みとなっている。建設業では、公共工事の下支えで改善を示すも、人手不足やコスト増等の重荷は継続している
https://www.jcci.or.jp/news/research/lobo/2024/0731110000.html
総務省
労働力調査(基本集計)2024年(令和6年)6月分及び4~6月期平均(7/30)
6月結果:
- 就業者数
就業者数は6822万人。前年同月に比べ37万人の増加。23か月連続の増加 - 完全失業者数
完全失業者数は181万人。前年同月に比べ2万人の増加。3か月連続の増加 - 完全失業率
完全失業率(季節調整値)は2.5%。前月に比べ0.1ポイントの低下
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01toukei04_01000266.html