台風に備える企業の判断と対応策
台風10号が日本列島を迷走しています。
当初の予報よりはるかに進度が遅く、いつになったら通過するのか、それとも直撃を免れるのか、全く見当がつきません。
交通への影響も大きく、新幹線や航空機を始め、各地方の鉄道も運転見合わせや運休を決めている所がたくさんあります。
この状況で通常通り仕事を続けるのか、休業するのか、企業にとっては難しい判断が求められます。
労働基準法26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」とあります。
しかし、台風による休業がこの使用者の責に帰すべき事由に該当するかが問題です。
使用者の責に帰すべき事由に該当しない不可抗力の判断基準は、以下の2点を満たす必要があります:
- 原因が事業の外部から発生した事故であること
- 事業主が通常の経営者として最大限の注意を払っても回避できなかった事故であること
台風による被害や交通機関の運休で従業員が出勤できない場合は、不可抗力と判断され、休業手当は不要と考えられます。一方、会社が鉄道などの運転休止を見越して予防的に休業を決定した場合は、不可抗力とみなされず、休業手当が必要です。
実務上の対応としては、次のような選択肢も考えられます。
- 在宅勤務への切り替え
- 年次有給休暇の取得奨励(強制は不可)
- 恩恵的に出勤扱いとし、賃金を全額支払う
厚生労働省は、令和元年の台風第19号時に「労使がよく話し合い、労働者の不利益を回避する努力が必要」との指針を示しています。企業は、労働者に不利益が生じないよう配慮しながら適切な対応を行うことが重要です。
いずれにせよ、台風が早く過ぎ去ることを願うばかりです。
参考リンク:令和元年台風第19号による被害に伴う労働基準法や労働契約法に関するQ&A
それでは今週のニュースPickupをどうぞ!
厚生労働省
全ての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされました
~答申での全国加重平均額は昨年度から51円引上げの1,055円~(8/29)
47都道府県で、50円~84円の引上げ(引上げ額が84円は1県、59円は2県、58円は1県、57円は1県、56円は3県、55円は7県、54円は3県、53円は1県、52円は2県、51円は6県、50円は20都道府県)
改定額の全国加重平均額は1,055円(昨年度1,004円)
全国加重平均額51円の引上げは、昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額
最高額(1,163円)に対する最低額(951円)の比率は、81.8%(昨年度は80.2%。なお、この比率は10年連続の改善)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_42150.html
「令和6年版厚生労働白書」を公表します
~第1部のテーマは「こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会に」~(8/27)
【第1部】テーマ「こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会に」
- こころの健康を取り巻く環境とその現状について考察しています。
- こころの健康に関する取り組みの現状を整理しています。
- 上記を踏まえ、「こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会」への方向性を提示しています。
【第2部】「現下の政策課題への対応」
子育て、雇用、年金、医療・介護など、厚生労働行政の各分野について、最近の施策の動きをまとめています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_42715.html
雇用政策研究会報告書の公表について
~多様な個人が置かれた状況に関わらず包摂され、活躍できる労働市場の構築に向けて~(8/23)
本報告書では、2040年の労働市場において、人口減少を背景とした労働供給制約が見込まれる中、
- 多様な個人の労働参加の促進と経済成長の実現
- 人手不足の類型に応じた適切な対応
- 労働者に選ばれる職場づくり
といった観点から、
- 多様な個人の労働参加
- 新たなテクノロジー等を活用した労働生産性の向上
- 労働市場のインフラ整備等
という3つの柱のもとで、必要な施策の方向性がまとめられました。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000204414_00017.html
労働者死傷病報告の報告事項が改正され、電子申請が義務化されます(令和7年1月1日施行)(8/23)
※令和7年1月1日より、労働者死傷病報告のほか、以下の報告も電子申請が義務化されます。これらの報告にも、入力支援サービスをご活用ください。
- 総括安全衛生管理者/安全管理者/衛生管理者/産業医の選任報告
- 定期健康診断結果報告
- 心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告
- 有害な業務に係る歯科健康診断結果報告
- 有機溶剤等健康診断結果報告
- じん肺健康管理実施状況報告
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/denshishinsei_00002.html
働き方・休み方改善ポータルサイト(厚生労働省)
「勤務間インターバル制度導入促進シンポジウム」を9月19日(木)にオンラインで開催します(参加無料)(8/23)
企業において、従業員の健康管理やワーク・ライフ・バランスの確保は重要な課題です。
本シンポジウムでは、2019年4月から企業の努力義務となっている勤務間インターバル制度について、その重要性や企業が取り組むことによるメリット、取組を進めるためのポイント等について、先進事例とともに解説します。
https://work-holiday.mhlw.go.jp/seminar/
内閣官房
ジョブ型人事指針を公表(8/28)
令和6年6月に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版」などで策定することが示されていた「ジョブ型人事指針」が、新しい資本主義実現会議「三位一体労働市場改革分科会」において策定され、公表されました。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/jobgatajinji.pdf
ITmedia ビジネスオンライン
優秀だが昇進できない人 採用時と入社後の「評価のズレ」は、なぜ起こるのか?(8/27)
「あの人は優秀だ」と誰もが認めるような人が、入社後、会社からあまり評価されないケースがある。採用時と入社後の評価のズレは、なぜ起こるのか。理由を辿っていくと、社員マネジメントにおける日本企業の課題が浮かび上がる。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2408/27/news015.html
中小企業庁
「中小M&Aガイドライン」を改訂しました(8/30)
中小企業庁は、「中小M&Aガイドライン」を改訂しました。本改訂によって、中小M&A市場における健全な環境整備と支援機関における支援の質の向上を図ります。
https://www.meti.go.jp/press/2024/08/20240830002/20240830002.html
弁護士ドットコムニュース
職場に「男女別の休養室」ありますか? 50年ぶり法改正、3年前から設置が義務化(8/31)
3年前から、職場における労働衛生基準が変わり、現在は常時50人以上、あるいは常時女性が30人以上の労働者を使用する事業者は、「休養室」または「休養所」を男性用と女性用に区別して設ける必要があるとされています。
https://www.bengo4.com/c_5/n_17877/
愛知県
あいちの勤労(2023年年報)(8/30)
- 賃金
常用労働者1人当たりの平均月間「現金給与総額」の調査産業計は354,256円で、前年比1.6%増となった。「きまって支給する給与」は285,759円(前年比2.2%増)で、このうち「所定外給与」は23,045円となった。 - 労働時間
常用労働者1人当たりの平均月間「総実労働時間数」の調査産業計は138.5時間(年換算1,662時間)で、前年比0.8%増となった。このうち「所定内労働時間数」は126.8時間(前年比1.0%増)、「所定外労働時間数」は11.7時間(前年比0.4%減)となった。 - 雇用
「常用労働者数」の調査産業計は3,163,881人で、前年比0.4%減となった。このうち「パートタイム労働者数」は936,080人で、常用労働者数に占める割合は29.6%となった。
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/toukei/maikin-2023.html
職場のメンタルヘルス対策セミナーの参加者を募集します!(8/29)
愛知県では、メンタルヘルス対策の重要性を啓発し、企業における取組を促進させるため、中小企業の経営者や人事労務担当者を主な対象とする「職場のメンタルヘルス対策セミナー」を開催しています。
今回のセミナーでは、「社内のメンタルヘルス対策について」をテーマに、導入編と実践編を2回ずつ(計4回)開催します。
https://www.pref.aichi.jp/press-release/mentalseminar2024.html