シリーズ「給与計算のツボ」第10回 〜通勤手当〜
シリーズ「給与計算のツボ」は、スタートアップ経営者の方や、給与担当を始めたばかりの初心者向けに、給与計算にまつわるあれこれを、不定期にお伝えするものです。
給与計算のカラクリの基本的な仕組みを知っておくことで、従業員や社長からの質問に、自信を持って答えられるようになることを目指します。
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通勤手当は、従業員の自宅から勤務先までの通勤にかかる費用を会社が手当として支給するものです。労働基準法では通勤手当の支払いについての規定はなく、支払うかどうかは会社の判断に委ねられていますが、ほとんどの会社では福利厚生の一環として支給しています。
今回は、通勤手当の給与計算における注意点について解説いたします。
1.就業規則・賃金規程に基づく算定
まず、通勤手当をどのように、いくら支払うのかを就業規則や賃金規程で確認することが必要です。会社で定められたルールに従い、正しく算定することが基本となります。そのため、規則の内容はできるだけ曖昧さを排除し、従業員間で不公平が生じないようにすることが重要です。
2.課税・非課税の範囲
通勤手当は、所得税法上、一定の範囲で非課税とされていますが、それを超える部分については課税処理をする必要があります。電車やバスなどの公共交通機関を利用した場合、最も経済的かつ合理的な経路および方法で通勤した場合の金額が、月額15万円まで非課税です。通常、ほとんどのケースでこの範囲内に収まることが多いでしょう。
自家用車や自転車での通勤手当の非課税限度額は、片道の通勤距離に応じて定められています。例えば、片道2キロメートル以上10キロメートル未満の場合、月額4,200円までが非課税です。もし、就業規則で片道1キロメートルあたり1,000円と定められており、通勤距離が6キロメートルである場合、通勤手当は6,000円、そのうち4,200円が非課税となり、残りの1,800円が課税対象となります。
国税庁 電車・バス通勤者の通勤手当:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2582.htm
マイカー・自転車通勤者の通勤手当:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2585.htm
3.社会保険料の計算に含まれる通勤手当
社会保険の定時決定(算定基礎届)・随時改定(月額変更届)の計算において、通勤手当は他の手当と同様に報酬に含まれます。
通勤費を日額で決めている場合、月ごとに支給額が変動しますが、その場合は月ごとの支給額の変動を固定的賃金の変動とみなす必要はありません。日額に変更があった場合に固定的賃金の変動とします。
4.定期代の支払い
定期代相当額を通勤手当として支払うケースも多くあります。3ヶ月や6ヶ月の定期代を支給する場合、その期間に合わせて支払う方法と、定期代をその月数で割り毎月支払う方法があります。前者の場合、社会保険の定時決定(算定基礎届)・随時改定(月額変更届)、雇用保険の離職票作成、また所得税法上の非課税枠算定のために、月ごとに按分する必要があります。按分時の端数処理にはそれぞれ異なる取り扱いがあるため、注意が必要です。
5.入社・退職時の通勤費の計算
社員が入社・退職した際の通勤費の計算については、一月分の通勤費を暦日で日割りするのか、月平均の所定労働日数で日割りするのか、またはその月の所定労働日数で日割りするのか、会社ごとにルールが定められています。それに従って正確に計算することが求められます。退職前に有給休暇を取得する場合の通勤費の取り扱いについても、事前に明確に定めておき、トラブルを未然に防ぐことが重要です。
それでは今週のニュースPickupをどうぞ!
厚生労働省
特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)2024年10月1日より要件が緩和され、より利用しやすくなりました。
メンタルヘルスや精神障害への理解促進を図るため、 映画『アイミタガイ』タイアップします(10/4)
今回タイアップする映画『アイミタガイ』(=「相身互い」)は、大切な友人を失った主人公やさまざまな背景から立ち止まっている登場人物が、周りの人々とのほんの小さなつながりや想いに支えられ、それぞれが前を向いていく姿を描いた物語です。世界メンタルヘルスデーのイベントのテーマ「つながる、どこでも、だれにでも」との親和性もあり、厚生労働省では、本タイアップを通じ、メンタルヘルスや精神障害への更なる理解促進が図られることを期待しています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_001_004.html
毎月勤労統計調査 令和6年8月分結果速報(10/8)
- 現金給与総額は296,588円(3.0%増)となった。うち一般労働者が377,861円(2.7%増)、パートタイム労働者が110,033円(3.9%増)となり、パートタイム労働者比率が30.40%(0.06ポイント上昇)となった。なお、一般労働者の所定内給与は333,182円(2.9%増)、パートタイム労働者の時間当たり給与は1,363円(4.8%増)となった。
- 共通事業所による現金給与総額は3.1%増となった。うち一般労働者が3.2%増、パートタイム労働者が4.2%増となった。
- 就業形態計の所定外労働時間は9.3時間(3.1%減)となった。
!https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r06/2408p/2408p.html
※名目賃金は非常に高い伸びですが、実質賃金は3ヶ月ぶりの減少となっています。
「令和6年版 過労死等防止対策白書」を公表します
~医療従事者の労災認定状況、DX 等先端技術担当者及び芸術・芸能従事者(スタッフ)の働き方の実態等について調査分析~(10/11)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44199.html
明るい職場応援団(厚生労働省)
「NOハラスメント」の新しいポスターの配布申し込み受付を開始しました。(10/7)
「あなたがつくる ハラスメントのないあかるい社会」と題して、職場のハラスメント防止のためのポスターを作成しました。
このポスターを、先着1800社様に無料で送付いたします。
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/nopawahara-poster/
総務省
家計調査報告(二人以上の世帯)2024年(令和6年)8月分(10/8)
- 消費支出(二人以上の世帯)は、 1世帯当たり 297,487円
- 前年同月比 実質 1.9%の減少 名目 1.5%の増加
- 前月比(季節調整値) 実質 2.0%の増加
- 勤労者世帯の実収入(二人以上の世帯)は、1世帯当たり 574,334 円
- 前年同月比 実質 2.0%の増加 名目 5.6%の増加
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01toukei07_01000260.html
ITmedia ビジネスオンライン
なぜ「ジョブ型雇用」は機能しないのか? 弱点を補う術は(10/11)
昨今注目を集めるジョブ型雇用。しかしデメリットもあると筆者は指摘する。デメリットを認識しないまま流行に乗ってジョブ型移行を進めることは、実は大きなリスクを伴うという。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2410/11/news074.html