労働基準関係法制研究会 第14回資料
厚生労働省が公表した「労働基準関係法制研究会 第14回資料」(下記ニュースPickup参照)には、労働基準法を中心に今後の法改正に向けたさまざまな議論の叩き台が示されています。この研究会は、働き方改革関連法に基づく制度見直しを目的に学識経験者が集まり、中長期的な視点から議論を行っています。今回の資料には、企業経営や人事労務の現場に大きく影響を与える提案が含まれており、その中から特に注目すべきポイントを取り上げます。
過半数代表者の課題と機能強化
過半数労働組合がない事業場では、労働者の意見を代表する「過半数代表者」が選出されます。しかし、現在は以下のような課題があります。
- 適切な手続きが行われずに代表者が選ばれてしまうことがある
- 知識や経験不足、責任の重さから立候補者が不足しがち
これらを改善するため、過半数代表者の役割や選出方法、使用者からの支援を労働基準法で明確化することが提案されています。
労働時間に関する情報開示と制度見直し
労働時間規制の見直しについても議論が行われていますが、現時点では時間外・休日労働時間の上限規制そのものを変更することには社会的合意を得るための蓄積が不足しているとされています。
ただし労働時間に関する情報を透明化する取り組みとして、企業は時間外・休日労働の実態を把握し、求職者や労働者が一覧できる形で開示することが求められています。また、36協定を締結する際には、過半数代表者への情報開示が義務化される方向です。
さらに、テレワークの普及を受け、フレックスタイム制の柔軟化も議論されています。特に、「コアタイム」ではなく特定の日の始業・終業時刻を指定する「コアデイ」という新しい制度の導入が提案されており、これによりテレワークと通常勤務が混在する環境でもフレックスタイム制が利用しやすくなることが期待されています。
長時間労働の防止策
労働者の健康を守るための規制強化も検討されています。現行の「最大4週4休制」を改め、「13日を超える連続勤務を禁止する」というルールを労働基準法に盛り込む案が提示されています。この規定は、長期間の連続勤務による過労や健康被害を未然に防ぐためのものです。
副業・兼業時の割増賃金計算の見直し
副業・兼業を行う労働者の労働時間を通算する仕組みには課題があり、企業に大きな負担を強いています。特に、割増賃金を計算するために本業と副業の労働時間を日ごと詳細に管理する必要があるため、雇用型副業の実現が難しい状況です。
これを改善するため、労働時間の通算は健康管理の観点で維持しつつ、割増賃金の支払いについては通算を求めない制度への改正が検討されています。この変更により、副業・兼業の受け入れがしやすくなり、多様な働き方の促進につながることが期待されています。
資料では他にも勤務間インターバル制度やフリーランス・事業者間取引適正化等法との関係など、興味深い内容が多く論じられており、今後の議論の動向に注目が必要です。
それでは今週のニュースPickupをどうぞ!!
厚生労働省
労働基準関係法制研究会 第14回資料(11/11)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45355.html
第20回社会保障審議会年金部会資料(11/15)
- 被用者保険の適用拡大及び第3号被保険者を念頭に置いたいわゆる「年収の壁」への対応について
- 脱退一時金について
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/nenkin_20241115.html
令和7年3月大学等卒業予定者の就職内定状況(10 月1日現在)を公表します(11/15)
- 大学(学部)は 72.9%(前年同期比▲1.9ポイント)
- 短期大学は 42.3%(同+2.4ポイント)
- 大学等(大学、短期大学、高等専門学校)全体では 70.8%(同▲1.5ポイント)
- 大学等に専修学校(専門課程)を含めると 68.8%(同▲1.4ポイント)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000184815_00051.html
働き方・休み方改善ポータルサイト(厚生労働省)
「勤務間インターバル制度導入促進シンポジウム」のアーカイブを公開しました。(11/15)
本シンポジウムでは、2019年4月から企業の努力義務となっている勤務間インターバル制度について、その重要性や企業が取り組むことによるメリット、取組を進めるためのポイント等について、先進事例とともに解説します。
https://work-holiday.mhlw.go.jp/seminar/
明るい職場応援団(厚生労働省)
令和6年12月10日に「職場におけるハラスメント対策シンポジウム」をオンラインで開催します。参加申込み受付を開始しました。(11/11)
厚生労働省では、12月を「職場のハラスメント撲滅月間」と定め、ハラスメントのない職場環境づくりを進めるため、集中的な広報・啓発活動を実施しています。
その一環として、2024年12月10日(火)に、「職場におけるハラスメント対策シンポジウム」をオンラインで開催します。
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/symposium
全国健康保険協会
これからは保険証のルールが変わります。保険証は、マイナ保険証へ。(11/12)
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/honbu/other/mynumber_jigyounushi_2411.pdf
ITmedia ビジネスオンライン
「総務のプロ」はどう目指す? 社内外で「引っ張りだこ」になる経験の積み方とは(11/11)
総務はどのようにキャリアを積むべきか? 社内外で「引っ張りだこ総務」になる方法を解説。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2411/11/news053.html
退職代行に怒り心頭? キレる企業が陥る「3つの勘違い」(11/15)
退職代行からの電話にキレて感情をぶつける企業側は、3つの点で勘違いを起こしていると筆者は指摘する。退職代行事業者から電話がかかってきたとき、企業側はどう受け止めるべきなのか。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2411/15/news041.html
弁護士ドットコムニュース
フリーランス法施行、当事者の要望は?…口約束も横行 やくみつるさん「私も新聞社と交わしていない」 (11/15)
フリーランスの実態を調査する団体「一般社団法人 日本フリーランスリーグ」(名誉会長・やくみつる氏)は、11月14日、フリーランスが契約条件に求める調査結果を公表した。
https://www.bengo4.com/c_5/n_18146/
中小企業庁
下請取引の適正化について、関係事業者団体に要請しました(11/15)
これから年末にかけて資金需要が高まる中、下請事業者の資金繰り等が一層厳しさを増すことが懸念されることから、下請事業者の資金繰りに支障を来すことがないよう、経済産業省は、関係事業者団体約1,700団体に対し、経済産業大臣及び公正取引委員会委員長の連名による文書をもって、下請取引の適正化について要請しました。
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/2024/241115shitauke.html