転職で賃金が増える人が増加 令和6年雇用動向調査の結果から
厚生労働省の実施している雇用動向調査では、「建設業」「製造業」「電気・ガス・熱供給・水道業」「情報通信業」「運輸業,郵便業」など16の産業について、就業者の移動の実態を調査しています。
先日公表された「令和6年雇用動向調査」によると、2024年度の入職率と離職率はいずれも低下し、入職超過率は縮小しました。
一方で注目すべきは、転職入職者のうち「前職より賃金が増加した」と回答した割合が40.5%、「前職より賃金が減少した」割合29.4%、「変わらない」割合28.4%を大きく上回り、前年と比べると、「増加」した割合が3.3 %上昇し、「1割以上増加」した割合も3.8 %上昇している点です。転職者の賃金状況は近年上昇傾向にあり、待遇改善を求めて転職する人が増えている実態が示されました。
この結果は、人材の流動性が一時的に落ち着いても「良い条件なら転職する」という行動は強まっていることを意味します。優秀な人材ほど待遇改善やキャリアアップの機会を重視し、転職を前向きな選択肢として捉える傾向が強まっていると見ることができますね。
企業にとっては、採用難の状況が続く中で、既存社員の流出を食い止めるために、給与水準の見直しだけでなく、スキル開発の機会や柔軟な働き方、安心できる職場環境を提供することが、これまで求められているのではないでしょうか?。
出典:厚生労働省|令和6年 雇用動向調査結果の概要(2025/8/26)https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/25-2/index.html
それでは今週のニュースPickupをどうぞ!!
経済産業省|電子商取引市場調査 2024年結果(2025/8/26)
国内BtoC-EC市場は26.1兆円(前年比5.1%増)、BtoB-EC市場は514.4兆円(前年比10.6%増)と、いずれも拡大を続けています。
🔎今週の視点
電子商取引の拡大は人材ニーズにも大きな変化をもたらしています。EC運営やデジタル販売管理に対応できる人材の確保や社内教育が重要になってくると思います。また、24時間稼働やリモートでの販売管理が必要となるため、柔軟な勤務制度への転換を検討する必要が出てくるかも知れませんね。
出典:https://www.meti.go.jp/press/2025/08/20250826005/20250826005.html
ITmedia|「賞与の給与化」広がる背景(2025/8/25)
ソニーが賞与を廃止し月給へ振替する制度を導入。大手企業を中心に「賞与の給与化」が広がりつつあり、企業・従業員双方にメリットがあると報じられています。
🔎今週の視点
従来の「ボーナス頼み」の賃金体系から、安定的な月収重視への転換が進みつつあります。従業員にとっては生活設計がしやすく、企業にとっても固定的な人材確保策となりますが、賞与による業績連動性が薄れるリスクも。中小企業は、自社の人件費管理や従業員ニーズに応じた制度設計を考える契機になりますね。
出典:https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2508/25/news048.html
経済産業省|日本スタートアップ大賞2025(2025/8/27)
経済産業省は「日本スタートアップ大賞2025」を発表。大賞は物流・小売分野でAIロボットを提供するTelexistence Inc.が受賞。人手不足問題への先進的な解決策が評価されました。
🔎今週の視点
人手不足は、どの業界でもいま目の前の現実になっています。そんな中でAIやロボットの活用は、もう一部の先進企業だけの話ではなく、現実的な選択肢として広がりつつあります。もし中小企業でも無理なく導入できる仕組みが普及すれば、職場の負担を減らし、人が辞めにくい環境づくりにもつながるのではないでしょうか。行政や金融機関の後押しも始まっている今だからこそ、「自社には関係ない」と片付けずに、少し立ち止まって考えてみる価値がありそうです。
出典:https://www.meti.go.jp/press/2025/08/20250827003/20250827003.html
総務省|労働力調査 2025年7月分(2025/8/29)
就業者数は6,850万人で前年同月比55万人増、36か月連続の増加。完全失業率は2.3%と前月比0.2ポイント低下し、6か月連続で改善しました。
🔎今週の視点
労働市場は堅調で、失業率も低水準を維持しています。しかし求職者にとって売り手市場が続く一方で、企業側の採用難は深刻です。人材確保の競争が続くなか、給与水準だけでなく、柔軟な勤務制度やキャリア支援といった総合的な待遇改善が鍵になります。
出典:https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01toukei04_01000284.html
愛知県|仕事と育児・介護の両立支援シンポジウム(2025/8/28)
愛知県は「ダブルケアラー」支援をテーマにシンポジウムを開催。仕事と育児・介護の両立を支援するため、基調講演やパネルディスカッションを実施します。
🔎今週の視点
介護と子育てを同時に抱える「ダブルケア」。今後確実に増えていくと言われており、働く人にとっては大きな負担であり、離職につながる要因にもなり得ます。だからこそ企業は、制度を用意するだけでは十分とは言えないのではないでしょうか。安心して働き続けられる雰囲気や職場文化をどうつくるかが、より重要になっていくと考えられます。行政の支援や地域とのつながりも活かしながら、「ここなら続けられる」と感じてもらえる環境づくりを意識してみてもよいかもしれません。
出典:https://www.pref.aichi.jp/press-release/ikuji-kaigo2025.html