ニュースPickup 2025年3月8日を掲載しました。

2025年3月8日

労働基準法改正に向けた議論を開始

厚生労働省は2月28日に労働政策審議会の労働条件分科会を開催しました。これは1月に公表された労働基準関係法制研究会の報告を受けたもので、この分科会を通じて労働基準関係法制の見直しが議論される予定です。

今回は今後議論されるであろうテーマについて、研究会の報告書をもとにピックアップしました。

労働基準関係法制に共通する総論的課題
  1. 労働者の定義の見直し
    フリーランスや偽装請負など、形式的には労働者ではないが実態として労働者性がある場合について、海外の動向も見据えながら具体的な判断基準の設定が検討されています。
    • 人的な指揮命令関係だけでなく、経済的な依存や交渉力の差をどう考えるか
    • 労働者性の立証責任を労働者側・事業主側のどちらに置くか(推定規定)
    • 労働者性を判断するための具体的なチェックリストの導入
  2. 事業・事業場の概念の再検討
    労働基準法は原則として事業場単位で法を適用しますが、テレワークやデジタル空間で働くケース等そもそも事業場という概念が当てはまらない働き方も始まっており、現状の枠組みが現代の働き方に合っているかを見直す議論が行われます。労使コミュニケーションにおいても事業・事業場の概念を検討すべきとされています。
  3. 労使コミュニケーションの強化
    労働条件や労使関係ルールを設定するには労使合意が前提ですが、労働組合の組織率が低下し、また現行の労働基準法では、「過半数代表」や「過半数代表者」は明確には定義されておらず、過半数代表者の適正な選出や過半数代表の役割に課題があると指摘されています。
    過半数代表者の適正選出を確保し、基盤を強化するためには、過半数代表者等の定義選出手続き権利保護行政機関等の支援人数や任期の在り方について明確にしていくことの必要性が問われています。

労働時間法制の具体的課題
  1. テレワーク等の柔軟な働き方
    テレワークの普及により、従来の事業場単位での労務管理が難しくなります。始業・終業時刻が曖昧になりがちであり、長時間労働につながるリスクがあります。その解決のため、テレワークに適用できるより柔軟な労働時間管理について検討ががされています。
    • テレワークと通常勤務の混在に対応できるフレックスタイム制の見直し
    • 一時的な家事や育児への対応等のための中抜け等を前提とした客観的な労働時間の測定と、新しいみなし労働時間制の検討
  2. 労働からの解放に関する規制
    • 定期的な休日の確保
      現行制度で認められている4週4休制(4週間を通じ4日以上の休日を与える変形休日制)を見直し、2週間以上の連続勤務を防ぐという観点から、13 日を超える連続勤務をさせてはならない旨の規定を労働基準法上に設けるべきとの議論です。
    • 勤務間インターバル制度
      現状の努力義務を推し進め、より具体的な制度設計をするために、具体的な時間数の設定や、代替措置、段階的な実効性の向上などの検討がされています。
    • つながらない権利(Right to Disconnect)
      業務時間外のメールや電話連絡を制限する権利のことで、総合的な社内ルールを労使で検討ための積極的な方策(ガイドラインの策定等)の検討がされます。
  3. 副業・兼業の場合の割増賃金
    現行の労働基準法では、副業・兼業をしている労働者の労働時間は、複数の事業主間で通算されることが原則ですが、実際には本業と副業の勤務状況をお互いの事業主が把握するのは困難で、運用に大きな課題が残されています。
    こうした現状を踏まえ、労働者の健康確保のための労働時間の通算は維持しつつ、割増賃金の支払いについては通算を要しないよう、見直しが検討されています。

このように、労働基準法の大幅な見直しに向けた議論が始まっており、2026年度には法改正が行われる可能性があります。

今後の改正は、労働者にも企業にも大きな影響を与えるものです。議論の行方を注視し、必要な対応を早めに検討していきましょう。

【参考】
「労働基準関係法制研究会」の報告書を公表します:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_48220.html

第194回労働政策審議会労働条件分科会(資料):https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_53211.html

それでは今週のニュースPickupをどうぞ!!


厚生労働省
「男女間賃金差異分析ツール」を公開しました
~同業種・同従業員規模の企業平均データとの比較により自社の賃金差異の要因を分析できます~(3/3)

厚生労働省では、主に中小企業向けに男女間賃金差異の要因を分析できる簡易なツールとして「男女間賃金差異分析ツール」を作成し、このたび公開しました。
男女間賃金差異の要因を分析することは女性活躍に関する課題分析やより効果的な女性活躍の取組につながります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_53416.html

広報誌「厚生労働」3月号(3/3)

特集1:技能五輪国際大会 若き技能者の世界への挑戦
特集2:災害時に現地で活動する保健・医療・福祉支援チームの成り立ちと取り組み(後編)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202503.html

人事労務マガジン 定例第174号(3/5)
  1. 広報誌「厚生労働」3月号発売中
    特集1:技能五輪国際大会 若き技能者の世界への挑戦
    特集2:災害時に現地で活動する
    保健・医療・福祉支援チームの成り立ちと取り組み(後編)
  2. 職場における学び・学び直し促進シンポジウム(第4回)のご案内
  3. 今年の4月から「出生後休業支援給付金」「育児時短就業給付金」を創設します【再掲】

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_53472.html

働き方・休み方改善ポータルサイト(厚生労働省)
働きがいのある職場づくりのための支援ハンドブックを掲載しました。(3/7)

働きがいに関係する概念として近年注目度が増しているエンゲージメントの概念や、企業がエンゲージメント向上に取り組む意義に加え、具体的な取組事例などを紹介しています。
https://work-holiday.mhlw.go.jp/work-engagement/
※ページ下部にあります。

日本商工会議所
「中小企業における最低賃金の影響に関する調査」の集計結果について
~新たな政府目標に対し、地方・小規模企業の4社に1社が「対応不可能」、 2025年度より7.3%引上げとなれば、地方・小規模企業の2割が「休廃業を検討」~(3/5)

日本商工会議所ならびに東京商工会議所(ともに小林健会頭)は、標記調査を実施し、別添のとおり結果を取りまとめましたので、お知らせいたします
https://www.jcci.or.jp/news/research/2025/0305110017.html

中小企業庁
毎年3月は「価格交渉促進月間」です(2/28)

毎年3月は「価格交渉促進月間」です。
昨年は、33年ぶりの水準となる賃上げ率でしたが、地域や業種によって上昇幅にはばらつきがあります。物価高も継続している中、今年も物価上昇に負けない大幅な賃上げを実現することが重要です。価格転嫁のための交渉が本格化するこの3月は、「賃上げ実現」のカギとなる極めて大事な時期です。
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/follow-up/index.html

愛知県
県内大学・短期大学の2025年3月卒業予定者の就職内定率(1月末現在)は90.6% ~前年1月末と比べて1.0ポイント上昇~(2/28)

https://www.pref.aichi.jp/press-release/j-2024-naiteiritsu20250303.html

ITmedia ビジネスオンライン
「必要性を感じていない」 中小企業経営者の46.4%が「女性活躍推進に取り組んでいない」(3/7)

46.4%の中小企業経営者が「女性活躍推進に取り組んでいない」と回答したことが、中小企業支援を行う、フォーバル GDXリサーチ研究所(東京都渋谷区)の調査から分かった。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2503/07/news074.html

経団連
週刊 経団連タイムス 2025年3月6日
責任あるデジタル技術の開発と利活用に向けて-企業行動憲章シンポジウムを開催(3/6)

https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2025/#d20250306

総務省
労働力調査(基本集計)2025年(令和7年)1月分(3/4)
  1. 就業者数
    就業者数は6779万人。前年同月に比べ65万人の増加。30か月連続の増加
  2. 完全失業者数
    完全失業者数は163万人。前年同月と同数
  3. 完全失業率
    完全失業率(季節調整値)は2.5%。前月と同率

https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01toukei04_01000276.html