年も明けようやく仕事のペースが戻ってきた感じがします。
今年2024年も労働関係法の改正が数多く予定されています。その中でも人事労務業務に影響の大きそうなものをいくつかピックアップしてみました。
労働条件明示のルールの追加(労働基準法施行規則)2024年4月1日〜
現在の雇い入れ時の就業場所・業務の内容の明示に加え、労働契約の締結と有期労働契約の更新時に、就業場所・業務の内容の「変更の範囲」 についても明示が必要となります。有期契約労働者については、契約の更新上限の有無と内容の明示も必要です。
具体的には労働条件通知書の変更が必要となります。
社会保険適用範囲の拡大(健康保険法)2024年10月1日〜
現在、厚生年金保険の被保険者数が101人以上の企業等で週20時間以上働く短時間労働者は、厚生年金保険・健康保険(社会保険)の加入対象となっています。この短時間労働者の加入要件がさらに拡大され、2024年10月から厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等で働く短時間労働者の社会保険加入が義務化されます。
パートタイマー労働者の方々への影響が大きいですので、早めに対象労働者と打ち合わせをしながら進めることが重要です。
参考:短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内
時間外労働の上限規制(労働基準法)2024年4月1日〜
働き方改革の一環として、時間外労働の上限が労働基準法に規定され、2019年4月(中小企業は2020年4月)から適用されています。一部の業種で適用が5年間猶予されていましたが、その猶予期間が終了することに伴い、下記のように上限規制が設けられます(一部抜粋)。
- 工作物の建設の事業:すべての上限規制が適用されます。
- 自動車運転の業務:年間の時間外労働の上限が年960時間となります(特別条項付き36協定)。但し、時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内とする規制が適用されません。また、時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヶ月までとする規制は適用されません。
- 医業に従事する医師:年間の時間外労働の上限が年1,860時間となります(特別条項付き36協定 B水準、C水準)。但し、時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内とする規制が適用されません。また、時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヶ月までとする規制は適用されません。
障害者雇用率等の段階的な引き上げ(障害者の雇用の促進等に関する法律施行令)2024年4月1日〜
障がい者の法定雇用率が段階的に引き上げられます。民間企業においては2024年4月からは2.5%、対象事業主の範囲が常時雇用する労働者40人以上となります。
前置きがかなり長くなってしまいましたが、今週のニュースPickupをどうぞ!
厚生労働省
毎月勤労統計調査 令和5年11月分結果速報(1/10)
- 現金給与総額は288,741円(0.2%増)となった。うち一般労働者が377,001円(0.3%増)、パートタイム労働者が104,253円(2.5%増)となり、パートタイム労働者比率が32.42%(0.46ポイント上昇)となった。なお、一般労働者の所定内給与は325,488円(1.5%増)、パートタイム労働者の時間当たり給与は1,307円(4.6%増)となった。
- 共通事業所による現金給与総額は2.0%増となった。うち一般労働者が1.8%増、パートタイム労働者が3.2%増となった。
- 就業形態計の所定外労働時間は10.3時間(1.8%減)となった。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r05/2311p/2311p.html
労働政策審議会 職業安定分科会 雇用保険部会報告(1/10)
厚生労働省の労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会(部会長 守島 基博 学習院大学教授)は、本日、雇用保険制度の見直しの方向性について、労働政策審議会職業安定分科会(分科会長 山川 隆一 明治大学法学部教授)に報告し、了承を得ましたので、公表します。これは、令和5年9月7日から議論を重ね「労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会報告書」(別添)としてとりまとめたものです。
厚生労働省としては、この報告書の内容を踏まえ、令和6年通常国会への法案提出に向け、法案要綱を作成し、労働政策審議会に諮問する予定です。
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000107715_00006.html
- 雇用保険制度の適用拡大(週10時間以上適用)
- マルチジョブホルダーへの雇用保険の適用の在り方等について引き続き検討 (65歳以上含め)
- 自己都合離職者の給付制限期間の短縮(現行2ヶ月→1ヶ月)
- 高年齢雇用継続給付給与率引き下げの周知及び廃止含めた検討
- 夫婦揃っての出生時育児休業給付の給付率引上げ(80%)
- こどもが2歳未満の期間に、時短勤務を選択したことに伴う賃金の低下を補い、時短勤務の活用を促すための給付の創設
等の幅広い提案がされています。今後の法改正に重要な影響を与えると思います。
令和6年能登半島地震に伴う雇用調整助成金の特例を実施します(1/11)
厚生労働省では、令和6年能登半島地震に伴う経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用調整を行わざるを得ない事業主に対して、下記のとおり雇用調整助成金の特例措置を講じます。
- 生産指標の確認期間を3か月から1か月に短縮します。
- 最近3か月の雇用量が対前年比で増加していても助成対象とします。
- 地震発生時に事業所設置後1年未満の事業主についても助成対象とします。
- 計画届の事後提出を可能とします。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37290.html
令和5年 民間主要企業年末一時金妥結状況を公表します(1/12)
~平均妥結額(849,545円)は2年連続の80 万円台~
- 平均妥結額は849,545 円で、昨年と比較して6,567 円(0.78%)の増。
- 平均要求額は882,117 円で、昨年と比較して10,862 円(1.25%)の増。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37190.html
総務省
家計調査報告(二人以上の世帯)2023年(令和5年)11月分(1/9)
- 消費支出
消費支出(二人以上の世帯)は、 1世帯当たり 286,922円
前年同月比 実質 2.9%の減少 名目 0.3%の増加
前月比(季節調整値) 実質 1.0%の減少 - 実収入
勤労者世帯の実収入(二人以上の世帯)は、1世帯当たり 494,181 円
前年同月比 実質 4.7%の減少 名目 1.6%の減少
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01toukei07_01000246.html
中小企業庁
中小企業生産性革命推進事業「事業承継・引継ぎ補助金」(八次公募)の公募要領を公表します(1/9)
事業承継やM&A(事業再編・事業統合等。経営資源を引き継いで行う創業を含む。)を契機とした経営革新等への挑戦や、M&Aによる経営資源の引継ぎ、廃業・再チャレンジを行おうとする中小企業者等を後押しするため、「事業承継・引継ぎ補助金」による支援を実施します。
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2024/240109shoukei_kobo.html
全国健康保健協会
令和6年度政府予算案を踏まえた収支見込みについて(概要)
【医療分】令和6年度協会けんぽの収支見込みについては、平均保険料率を10%と設定した上で、政府予算案(診療報酬改定等)を踏まえて算出した結果、単年度収支差は3,083億円、令和6年度末時点の準備金残高は5兆4,422億円が見込まれます。
【介護分】介護保険の保険料率については、単年度で収支が均衡するよう、介護納付金の金額を総報酬額で除したものを基準として算出することになります。令和6年度の介護保険料率は、令和5年度の介護保険料率1.82%よりも0.22%ポイント減少し、1.60%となります。
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g1/r5-12/23122801/
ITmedia ビジネスオンライン
生活苦は「社会保険料」のせいなのか? 負担率から本当の原因を考える(1/12)
12月に支給された賞与や源泉徴収票の数字を見て、厚生年金や健康保険などいわゆる社会保険に関する控除額にため息をついた人は多いかと思われます。
こうした世相を反映してでしょうか。「年々増大する社会保険料の負担により国民の生活はますます苦しくなります。そこでお勧めなのは〇〇です」と、各種投資商品のセールストークの枕詞にもなるほどです。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2401/12/news038.html