人手不足倒産が過去最多に 「採用」だけでは解決できない人手不足
10月以降の最低賃金改定を前に、9月3日、すべての都道府県で改定額の答申が出そろいました。全国加重平均は1,177円、昨年度から56円の引上げです。
賃金が上がれば、人件費の負担が増えます。それでも、賃金を上げなければ人手不足の解消ができない。そんな難しい状況が続いています。
そんな中で目に留まったのが、東京商工リサーチが発表した人手不足倒産の記事です。2026年8月の人手不足倒産は32件、前年同月より約4割増えており、8月としては過去最多。1~8月の累計も333件に達し、年間最多ペースが続いています。
この数字をどのように捉えればいいのでしょうか。
1~8月累計のうち、人件費高騰が175件、従業員退職が81件。人件費の上昇が経営を圧迫する一方、従業員が辞めたことで案件を失い、事業そのものが行き詰まる企業も増えているとのこと。
人件費の上昇については、最低賃金の引き上げや売り手市場が続く中、企業側の努力だけではどうにもならない部分があります。価格転嫁なども簡単な問題ではありません。
一方、「従業員が辞めたことで案件を失い、会社が行き詰まる」というのは、少し気になるところです。
もちろん、専門的な技術を持つ人や、長年顧客との信頼関係を築いてきた人が辞めれば、会社への影響は多大なものがあります。だからこそ、従業員に長く働いてもらえる環境づくりはもちろんですが、特定の従業員に仕事が集中しすぎていないかを考える必要があるのではないでしょうか。
ここで出てくるのが「属人化」の問題です。
特定の人にしかできない仕事があること自体は、必ずしも悪いことではありません。その人だからこそ持っている技術や経験が、会社の強みになることもあります。「自分にしかできない」ということが、仕事への誇りやモチベーションにつながる場合もあるでしょう。
ただ、特定の人がいなくなった途端に仕事そのものが止まってしまう状態は避けたいですね。専門性は大切にしながら、情報や仕事の進め方を共有したり、周辺の業務を仕組み化したりすることで、「その人の強み」と「会社として仕事を回す仕組み」を両立させることが必要なのだと思います。
そして、もう一つ重要だと考えるのが「生産性」です。
人材確保が難しい今こそ業務を見直し、ITやAIなども活用しながら、限られた人数でも仕事を回せるようにすることが、これからますます重要になってくるでしょう。
「人を採用する」「人に辞められないようにする」「少ない人数でも仕事が回るようにする」。
人手不足への対応は、この3つを同時に考えていく必要があるのかもしれませんね。
出典:東京商工リサーチ|賃金上昇、従業員退職による倒産が過去最多 8月の「人手不足」倒産 8月では最多の32件(2026/9/3)
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1203204_1527.html
それでは今週のニュースPickupをどうぞ!!
厚生労働省|2025年海外情勢報告(9/1)
2025年の海外における労働・雇用や社会保障の状況をまとめた「海外情勢報告」が公表されました。労働分野では11か国、社会保障分野ではEUを含む12か国・地域について、各国の制度や動向がまとめられています。
🔎今週の視点:
普段の仕事では国内の制度を見ることがほとんどですが、海外の制度や情勢は、普段あまり目に触れることがないので興味深いですね。
海外の雇用政策や社会保障制度を知っておくと、日本の今後を考えるうえでも参考になります。少し視野を広げて読んでみるのも面白いと思います。
出典:厚生労働省|2025年海外情勢報告(2026/9/1)
https://www.mhlw.go.jp/stf/toukei_hakusho/kaigai25.html
厚生労働省|令和7(2025)年「雇用動向調査」の調査結果を公表します ~入職率、離職率は低下、入職超過率は拡大~(8/31)
2025年の入職と離職の状況をまとめた「雇用動向調査」の結果が公表されました。入職率と離職率は前年から低下した一方、入職率から離職率を引いた入職超過率は拡大しました。産業別の状況や転職入職者、離職理由などについても調査結果がまとめられています。
🔎今週の視点:
入職率も離職率も低下した一方で、入職超過率は拡大しました。辞める人より入ってくる人のほうが多い状態が強まったということですが、これだけで人手不足が改善したとは言えません。離職者は年間で700万人を超え、転職入職者も506.2万人と前年より14.2万人増加しています。転職の理由を見ると、賃金だけでなく「労働時間、休日等の労働条件」や「職場の人間関係」も挙げられています。人手不足対策では、採用だけでなく、今いる従業員に「辞めない理由」をつくることも考えていきたいですね。
出典:厚生労働省|令和7(2025)年「雇用動向調査」の調査結果を公表します ~入職率、離職率は低下、入職超過率は拡大~(2026/8/31)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/26-2/index.html
厚生労働省|令和7年「外国人雇用実態調査」の結果を公表します(8/31)
2025年の外国人雇用の実態について調査結果が公表されました。外国人労働者の雇用状況や賃金、外国人を雇用する理由、雇用する上での課題、今後の就業希望などについて調査結果がまとめられています。
🔎今週の視点:
外国人労働者が増えている背景には、人手不足があります。特定技能へ移行して働く技能実習生もいます。受け入れ企業側では「日本語能力等のためにコミュニケーションが取りにくい」が課題となる一方、労働者側では「紹介会社(送出し機関含む)の費用が高かった」が22.2%で最も多くなっています。双方の事情を理解することが、定着にもつながるのではないでしょうか。
出典:厚生労働省|令和7年「外国人雇用実態調査」の結果を公表します(2026/8/31)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75722.html
厚生労働省|全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました ~答申での全国加重平均額は昨年度から56円引上げの1,177円~(9/3)
2026年度の地域別最低賃金について、47都道府県すべてで改定額が答申されました。引上げ額は54円から65円で、全国加重平均額は1,177円となり、昨年度から56円引き上げられる答申となりました。
🔎今週の視点:
今回の答申で、10月以降の最低賃金がほぼ見えてきました。最低賃金近辺の賃金で働く人だけを見ればよいわけではなく、その周辺の賃金も含めて見直しが必要になる場合もあるでしょう。給与表や求人時の賃金設定など、今のうちに一度確認しておきたいところです。
出典:厚生労働省|全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました ~答申での全国加重平均額は昨年度から56円引上げの1,177円~(2026/9/3)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75950.html
厚生労働省|第3号被保険者制度の在り方に関する検討会の第1回会議を開催(9/4)
第3号被保険者制度の在り方を検討するため、第1回の会合が開催されました。会合では、第3号被保険者制度の現状や、第3号被保険者を対象とした調査結果などについて説明が行われ、今後の検討に向けた議論が始まりました。
🔎今週の視点:
第3号被保険者制度については、以前から見直しの議論がありますが、今回検討がスタートしました。「第3号がなくなる」といった結論が出たわけではありません。今後、どのような方向で議論が進むのか、見続けることが重要ですね。
出典:厚生労働省|第3号被保険者制度の在り方に関する検討会(2026/9/4)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75817.html
厚生労働省|人事労務マガジン定例第191号 派遣労働者の同一労働同一賃金に関するセミナーを開催 他(9/2)
厚生労働省の「人事労務マガジン」第191号が発行されました。派遣労働者の同一労働同一賃金や受け入れ・育成に関するセミナーのほか、安全衛生、仕事と育児・介護の両立支援、10月1日から強化されるハラスメント対策など、企業の人事労務に関する情報が紹介されています。
🔎今週の視点:
10月1日からは、カスタマーハラスメントや求職者等に対するセクシュアルハラスメントについて、企業に必要な措置が義務付けられます。 派遣労働者の同一労働同一賃金についても改正が予定されています。10月を前に、今回のマガジンで一度確認しておきたい内容です。
出典:厚生労働省|人事労務マガジン定例第191号 派遣労働者の同一労働同一賃金に関するセミナーを開催 他(2026/9/2)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75831.html

